男前のガールに乾杯!

奥田英朗さんのガールを読んだ。短編小説が5本入ったもの。感想文になるが綴りたいと思う。

●ヒロくん


35歳で女性管理職になった聖子は、年上の男性の部下を持つ。
その部下は、男尊女卑の考え方で、聖子に威圧的な態度を取り、会議の場では意図的に恥をかかせようとし、指示にも従わない。縄張り意識、派閥意識が強く、味方と敵を作ろうとする。聖子はそのことを部長(男性)に相談したが、部長からは、男性を立てろと指示される。
そんな苦しみの中で、旦那のヒロくんは、聖子よりも自分が収入が低い事に対して、全然嫌じゃないよと本心から言ってくれた。

私はバリキャリなのかと考えたら、私ぐらいの年齢で同じように総合職で働く人なんて今はたくさんいるから、普通だとは思うが、この先年齢を重ねてもずっとこの働き方を続ける人っていうのは今の同世代の人数よりも減るんだろうなと思う。

私は仕事一筋で!のような考えは深く持っていないが、かといって男性を立てるとか、一歩引くみたいな考え方は全く持っていないので、多分2択でいえば聖子なんだろうと思う。と言いつつ私生活では男性がリードする方が良いなとか良いところ取りだが。笑

この先社会で生きていく中で、聖子が感じたようなもどかしさや苦しみを感じることになると思うが、そんな時は、聖子みたいに自分の信念だけは曲げてはいけないなと思った。

ゲームで負けた方が会社辞めようぜと聖子が言い出したのは、前読んだ本の「ジェーン・スーさんの、貴様はいつまで女子でいるつもりだ問題」と直接的に繋がって、あ、女性は仕事を失うことを恐れてないんだなと改めて感じた。

●マンション


友人のマンション購入に影響されて、マンションを買うことにした34歳キャリアウーマンゆかりの話。
マンションは資産であり、結婚とは別。結婚を意識してここ数年は大きな変化を避けてきた。
いつもは辞めてやる!ぐらいの強気の姿勢で他部署と喧嘩していたが、ローンという背負うもの、守るものがあるとゆかりは物腰柔らかになった。
仕事に向き合う気持ちが変わった。マンションを買ったら終身雇用に走るんだろうなと思った。
そんな中、ゆかりは自分を押し殺して仕事をしていたが、自分を誤魔化してマンションのために生きることはできないと感じ、思ったこと、信念を貫いて仕事をした。
自分のファーストプライオリティは自分を偽らないことだと確信した。
たまに自己嫌悪に陥るが、自分のことは好きだとゆかりは感じた。

私は断然賃貸派で、固定資産を持つ意味も分からないのだが、このマンションの話を聞いていたら悪くもないのか?稼げるのか?とも少し思った(が依然フットワーク軽く生きられる賃貸派)。
ローンを抱えるって、本当に責任が重いなと思った。本当の自分を押し殺して生きることと引き換えになることもあるんだなと思った。
マンション購入を通して、自分の人生を見つめ直すって素晴らしいなと思った。

自分のファーストプライオリティは自分を偽らないことだと確信した。という言葉には感動した。
何か自分に嘘をつかなければ得られないものがあるのであれば、私も正直に生きて信念を貫いて自分が自分を好きでいたいなと思った。

●ガール


広告代理店勤務の由紀子32歳独身。
仕事柄派手めな服装でいて、気づけば32歳。もう若くないから年相応であるべきかなと悩んでいた。
ディスコでは若い男性が、由紀子より年上の女性のことを裏でおばさんなのにと話しているのを聞いた。私もいつまでもガールでいるわけにもいかないなと考えていた。

そんな中、ファッションショーを企画することになり、大人のガールが輝いている姿を見て、男にどう思われようが、周りにどう思われようが、自分が在りたい自分でいることが大事だと学んだ。

ミニスカートとかは私の年齢になるとみんな履かないが、私はたまに履く。少し前まではツインテールもしていた。またしようかな。笑

服を買う時とかも、他の客の年齢層を見るようになった。場違いじゃないかな。でも、周りからどう思われるかでは無く、自分が自信を持っていられるか、楽しめるか、ありのままの自分でいられるかを大切にしたいなと思った。

●ワーキングマザー


36歳の孝子は27歳で結婚し、29歳で長男をもち、32歳で離婚したシングルマザー。
子供を持ってから営業部を離れていたが、この度戻った。
テレビ局社員の元夫は、家事分担には応じても、やってやるといった態度。不満を言うと自分の高給を持ち出し、孝子が家にいることを望んだ。息子ができたときは、孝子が仕事を辞めると思い込んでいた。そんな矢先に元夫が浮気をして浮気相手が妊娠。

離婚後は、父親とキャッチボールをしている他の子を見て、それをさせてあげられない自分は嫌なので練習して父親の役目も果たそうとする孝子。
シングルマザーであることを周りは気遣い、遠慮する。一人のカウントに入れて欲しい。お金を払えばホームヘルパーに頼んで解決できるのに。

孝子は育児を仕事に持ち出さない。理由にしない。女は、育児を持ち出せば周囲がひれ伏すことを知っている。三十代で独身の女性は、子供を産んだ人には勝てないってどこかで気後れがある。
子育てしてると、こっちは大役を果たしていて守られて当然という態度を取る人がいて、孝子はそういう人にはなりたくなかった。
ある拍子に、会社でそれを振りかざしてしまった自分がいて反省した。
人はそれぞれだ。幸せさどうかなんて、物差しを当てること自体が不遜だ。
立場は違っても、女同士は合わせ鏡だ。自分が彼女だったかもしれないし、彼女が自分だったかもしれない。そう思えば、優しくなれる。

女は、育児を持ち出せば周囲がひれ伏すことを知っている問題については、育児未経験の私はノーコメントだが、そうだなと思った。ある程度考慮してもらわなければならない時もあるのだろうが、孝子の心持ちは素晴らしいなと思った。

●ひとまわり


34歳の容子は、指導員を務めるイケメン新卒の慎太郎に恋心を抱き、イケメンの慎太郎に寄りつく若い女性たちに嫉妬し、邪魔をしようとしてきた。
執拗に慎太郎に独占欲を抱き、関わる女にイライラする自分が嫌だっだ。ある時、自分は現実逃避をするために慎太郎に恋心を抱き、時間を忘れたかったモラトリアムなのだと気づいてから、普通に接せるようになった。

若い女性にキツく当たる年上女性って多い。私もその経験をしてきた。でも、私が年齢を重ねると、若いことでチヤホヤされている若い子を見て、何とも思わないかと思うと、100%そうでは無いと言い切れない。今後はもっとそうなると思う。それは、今の自分をちゃんと受け入れられていなくて、自然に振る舞えていないからだと自分に置き換えて思った。

最後になるが、筆者は男性だということに驚いた。どういうヒアリング?を用いてこの描写をしたのだろう。

最後の解説部分(女性)は爽快だった。

「ガールの必須条件は男前であること。世の中の働くガールたちに、乾杯!」


エリー

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