ザ・ラストマン
留学時代の他大学からの同期である私の同志が、あなたのこの本の感想をブログに書いて欲しいと言ってくれた。
これはいわゆる仕事のオファーだと思っている。とても嬉しい。もちろん報酬があるわけではない。笑
すぐに図書館に借りに行って読んだ。
他にも、もし私にお勧めしたい本、読んで欲しい本があれば是非教えてほしい。
この本は、2009年3月、日立グループが7000億円の赤字を出した後、日立製作所の社長に就任してV字回復へ導いた川村隆さんが書いた本だ。
経営者、管理職たるもののあるべき姿や、大企業のあり方について書かれた本。ラストマンとは何ぞやということや、責任を取ることの意味合いや、役割について述べられている。
経営者や管理職でない立場の者が読んでも役に立つ言葉がたくさんあった。
【序章】
「自分の後ろには、もう誰もいない」
“自分の生活のために働くのも大事だが、周りの人の生活も支えるという意識を持つと、仕事の取り組み方は変わってくる”
従業員の生活を守ることも経営者の大きな責任だということが述べられていた。
単なる部下という見方ではなく、彼らの生活や背景も考える器が必要ということだ。
【第1章】
「大事なときに何を決めるか、どう決めるか
リーダーに求められていること」
川村さんは、社長に就任した際、大企業の意思決定の遅さに問題意識を持っており、意思決定を速くするために、経営判断層の人数を絞った。
事業分野毎のカンパニー制にし、各カンパニー長に責任と権限を与えた。
色んな事業をやっているからといって、自部門の業績の悪さを他部門にカバーしてもらおうと、初めからおんぶに抱っこではいけない。だからこそ、自カンパニーのことはそのトップが決める。その大事さが書かれていた。
周りがカバーしてくれる、支えてくれるという意識を初めから持っていたら責任感も何も生まれない。自分の担当はごく一分野だとしても、それに責任を持って成果を出すことが大切だと思った。
【第2章】
「きちんと稼ぐための思考習慣」
川村さんは、外の目を取り入れるため、社外取締役に監督役になってもらい、客観的に意見を述べるカメラの目になってもらった。
“自分が思っている自分と、周りが見ている自分はまるで違う。そのため、自分の目以外の客観的な評価を知っておかないと、何をどう直せばいいのかが分からない”
社員自身がカメラの目を持つためには、一旦会社から離れてみるのもいいとも言っていた。休職や転職で、違う環境に身を置くことの大切さを述べていた。
川村さん自身も日立グループではあるものの、違う子会社の会長をしたり、本体から離れた経験が生きたと言っていた。
“15分で結論を出す、長い会議は意味がない”
長く議論しても、反対意見が出てきて結論が出ないだけで、結局は少数の者が責任をもって決定しなければならず、それには15分以上は必要ないということだ。
会議の時間は短くしたい。決定することだけを予め明確にし、無駄な時間は省きたい。
決められないなら15分で終了すべきだ。
“企業は現状維持をめざした途端に腐り始める。
成長を目指してようやく現状維持を保てるくらい。
人の成長でも同じことが言える。
人は困難な経験をした時ほど成長するが、これぐらいでいいだろうと思った途端に成長が止まり、後退していく”
先ほどの環境を変えることにも関連すると思う。
生活していく上で、仕事をしていく上で、環境に適応していくことは大事だが、居心地がいい、慣れたと思った時にはもう変化しなければならない時だと思っている。
私は仕事に慣れたと思うことは今は無く、毎日違うことが起きていて、それに対する指針を持っている上司もほとんどおらず、相談、報告するにしてもその時間も取ってもらえていない。慣れる以前の問題かもしれない。
そのため、相談、報告事項は僅かな時間に収まるよう最小限に絞らなければならず、相談しても意思決定をしてもらえないので、自分で判断したり、他部門の人に相談しながら進めなければならない。そしてサラリーマンとしての報告責務はあるため、その決定を上司に報告をしている。
【第3章】
「意思決定から実行までのシンプルな手順」
①現状を分析する
財務諸表を読み数字の分析が大切ということが書かれている。
今入門版の会計の勉強をしているから、引き続きやろう。
②未来を予測する
“辛い決断、痛みを伴う決断をして、それを実行できる人が本当の経営者。
やめる決断をできる人、仕舞うタイミングを見極めること”
事業の撤退を決めると、その部門のOB始め、猛反発が出る。それで失敗した時は彼らからひどい目に遭うが、それでもラストマンは仕舞うという痛い決断をしなければならない。
振り返ってみると私の人生でも、やめる決断が1番苦しかったように思うことを思い出した。(前の10年の振り返りのブログに書いた)。
引き際は自分で決めなければならない。
③戦略を描く
“数字だけで無くビジョンを語る。
なぜ必要なのか、何のために必要なのか、それを達成すると何が起きるのか。
背景や将来を語る”
数字を読み解くことも大切で、偶然など無いのだと述べられているが、それと同時に人間としての熱さや魅力も大切だと述べられている。
私には、自分の仕事をサポートする専任のアシスタントがついているのだが、アシスタントには、作業内容だけでなく、背景、意味を説明し、私はこう考えているが、あなたが考えた上でやりやすいやり方に変えてくれと頼んでいる。
そうしたら、考えながら仕事をしてくれるし、ただ言われたことをやるだけでなく、やりがいも感じられるのでは無いかと考えている。
また、アイデアをノートにメモをすることの大切さも述べられている。
“物事の区切りごとに内省して、メモをすることは大切。充実した人生とは、内省のある人生ということだ”
私は川村さんのようにノートにメモをしていたらノートを無くしたり持ってくるのを忘れたり、移動中にメモできなかったりするし、何より字が汚いので、iPhoneにメモをしている。
5年弱使った前のiPhoneでは、メモが1000件ぐらいに及んだ。
ブログを始めてからは、区切りごとに、テーマごとにブログに書いているのでまとまって良い感じ。引き続き自分のペース、やり方で続けていきたい。
④説明責任を果たす
⑤断固、実行する
意見を述べたり、アドバイザーとして機能する経営者、管理職は多いが、自らの責任で断固実行することが出来る人は少ないそう。
何となく分かる気がする。
この本を読んでから更に、自分の仕事の責任を考えるようになった。同一労働同一賃金と言われているが、仕事内容を作業レベルで考えると似通った仕事をしていても、その仕事による責任度合いは社員と非正規では違うのだと思う。その責任の重さが給料なのだと思っている。
だからこそ、責任を取らない上は必要無いのだとも思う。部下がいない自分も例外ではない。
部下が責任を取るという気概を持って仕事をしていれば、組織はもっと良くなるし自分の成長にも繋がると思っている。
【第4章】
「いつも前向きに自分を磨く人」
“修羅場体験で人は覚醒する。
日立の教育は、能力を身につけてからマインドを鍛えていくという順番。日立流タフアサインメントとは、困難な課題を割り当てること。
現在求められている成果や能力を超えたポジション、あるいはミッションを与えることで成長を促す。
若手社員には、海外派遣プログラムを通して早い段階で経験を積ませる”
“会社組織の中で仕事をすることのありがたさもある。会社の中で仕事をしていれば、上司と意見が合わなかったり、窮屈な思いをしたりすることもある。一方では会社の設備やお金を使って1人では決してできない大きな仕事にチャレンジできる”
確かに今会社でアサインされている仕事や、与えてもらっている機会は、一個人で叶えられるものではないし、一人でやるためには時間もお金ももっとかかると思う。
自分の能力を超えた環境に身を置くことでもっと成長できるのだと思う。
“ラストマンになれるかなれないかの違いは、今目の前で起きている出来事に対してどう行動するか。
自分の役割が全体の中でどのくらいの重要度を占めているかを考えると、一見キツそうに思える仕事が、案外そうでもないことに気づくこともある。
少しくらい失敗しても大丈夫と思えれば、必要以上に緊張したり、逃げ出そうと考えたりはしなくなる”
組織の大きさを考えると、しんどいことや大変なことは、ほんのちっぽけなことだと気付かされる。全体を見る広い視野が大切だ。
“ケチらないで褒める。
第三者の評価を借りて褒めるのは効果がある”
私は管理職ではないので、自分の部下はおらず、自分の部下と思って仕事をしろと言われているのは、先ほど述べたアシスタント1人なのだが、同世代のアシスタントから、何様かと思われるのも覚悟の上だが、褒めるというか、尊敬の眼差しを持ち、すごいと思ったことに対しては、声をかけるようにしている。
先日、期限日にまだ相手方が処理をやっていないことが分かった。それを自分で気づいて、今日が期限だが相手がまだ処理をしていないと私に言ってきた。
投げたら終わりではなく回収して、見届けてまでが仕事であるとはっきりは伝えていなかったが、期限管理の意識をもって先に気づいてくれたことを褒め、相手をフォローしようと伝えた。
また、時間が無かったので単純に作業だけを伝えてしまった時、この言葉の意味が分からないと伝えてきた。言葉の意味を理解するかどうかは作業の結果とは無関係だったが、それでも、しっかりと分からないことがあった時にその場で質問をしたことに尊敬すると伝えた。
【第5章】
「慎重に楽観して行動する9カ条」
“慎重なる楽観主義者とは、コップに半分の水が入っていた時、水が半分も入っているけれど、コップいっぱいになればもっと良いと考える人”
物事を悲観してもいけないし、楽観視しすぎてもいけない。そのバランスが大切ということだ。
“人生をプロジェクトマネジメントする
自分の人生を自分でマネジメントするという発想を持つこと。会社や上司から命令されたことをこなすだけでなく、今自分のいる場所で、自分がやりたいこと、活躍できそうな分野を見つけて、能動的に取り組むべき。目標に近づくために今何をするべきかを逆算する”
サラリーマンは、最悪適当にも過ごせるなとつくづく思う。私の性格上、それをすると多方面から責められ苦しく、辞めるしか無くなると思っているが、この人の心持ちはどうなっているのだろうと不思議に思うぐらい適当に仕事をして、普通に過ごしている人も中にはいる。何となく会社に行って、嫌々当たり障りのないレベルで仕事をして、給料を普通にもらうこともできる。
私の場合は、それだとそこに居るのも苦しくなってしまうし、何よりやりがいは無い。サラリーマンという立場を活用して、能動的に仕事をしていきたい。
“必要以上に群れない。
近年は会社の飲み会に参加しない若者が増え、上の世代の悩みのタネになっていると聞くが、夜遅くまで俺とお前は仲間だと確認し合うだけの飲み会には付き合わなくても良いと思っている。
業務の中で話す時間を設ければ良い。
二時間飲んで本当に大事な話をしたのは三〜五分という場合もあり非効率”
“職場の仲間と良好な関係を築くのは大事だが、必要以上に群れていると、内向き志向になる。
それより職場の外に出会いを求め、新しい情報に触れられる場を作る方がキャリアアップに繋がる”
私は入社当時、人に覚えてもらったり人を覚えたりしなければならないと思っていたので、飲み会では二次会まで行くことが多かったが、最近は積極的に一次会で帰っている。
次の日しんどいし早く寝たいのが理由の一番だが、懇親の場も大切だが時間がもったいないなと思うことも増えてきたからだ。
うまく付き合いができる人が上に上がる風習はまだ根強いのだとも思うが。
“自分の健康にも責任を持つ。体力を維持することも仕事の一部”
先日の25歳にやるべきことの本のレビューブログで書いたことと同じだ。健康管理できていない人は社会人ではないということ、自分にも言い聞かせたい。
【第6章】
「私たち日本人に必要な意識とは何か」
“Remember, the best is yet to come!
ビジネスマン人生で困難やしんどいことがあっても、立ち止まらずに自分を信じて前進し、学習し続けていれば、最良の時が必ず訪れる”
人生で一番楽しかった時期は終わったと悲しむのではなくて、最良の時をこれから作っていこうという気概を持たなければならない。
私は大学の留学時代が人生で一番楽しかった時なのだが、これから、社会人としてキャリアを重ねて、自分でもっと色んなことができるようになることにもっと期待を持ちたいなと思う。
最良の時を作っていきたい。
【おわりに】
“改めて考える企業の社会的存在意義
最近は大企業に就職しようとする学生が減ってきて、起業したい学生が増えてきた。自分の作った会社で大きなことを成し遂げたいと考える学生が増えた。
それでも大企業は社会に貢献できる存在であり、大企業でしかできないことも多々ある。日立は、稼いだ利益を、地域に還元する社会イノベーション事業に取り組んでいる。
普段の仕事は誰かを救うために役立っている”
私も起業したい、違う景色も見たいと思っているが、サラリーマンだからこそできることも起業レベルでたくさんあるようにも感じる。
この本は、様々な立場の人が読むと感想も変わるのだと思う。
私自身も20年後や30年後に読むと、また違った視点や感想を持つのだと思う。
この仕事のオファーをくれた同志に感謝してブログを終わる。
エリー
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